出会いのご縁は、「アボカドのお告げ」のおかげ?
小学生の息子さんが高学年になるのを機に、それまで住んでいた2DKの賃貸マンションから一軒家への住み替えを考え始めた九谷さんご一家。ハニカムラボと出会ったきっかけを、奥さまは笑いながらこんなふうに話します。
希望していたこの辺りのエリアで、最初に中古一軒家を見に行ったんです。とてもきれいにリフォームしてあって、お値段もすごく安くて、不動産屋さんからも“いいですよ”って勧められたんですけど、どうもしっくり来なくて……。でもね、その日の夜、夕食の支度でアボカドを切ったら、外はきれいなのに中が真っ黒で!私、それを見て、“これは嫌な予感がする。あの物件はやめた方がいい”って思ったんですよ(笑)。それで、改めて中古物件を探して自分たち好みにリノベーションした方がいい、と考えて、リノベーションの会社さんを探そう、ってなったんです。ハニカムラボさんにはネット検索でたどり着いたんですけど、事例を見て、ここなら信用できる、と思いました。
それで会いに行ってみたら、これは絶対湯川さんに頼みたいって2人で意見が一致したんですよね。
ハニカムラボと意気投合した九谷家は物件探しを再開。そして「これぞ」と見込んだ中古一軒家で、リノベーション工事が始まりました。大変だったのは、雨漏りやシロアリ被害で家の土台が弱くなっていたこと。そこで家全体をジャッキアップして弱っていた材を入れ替え、さらに基礎にコンクリートを打設するという工事を実施。「めくってみて初めてわかる問題」は、古い家にはつきものですが、ハニカムラボではその情報と対策の共有も含め、着工してからは1〜2週に1度のペースで、九谷家と顔を合わせて話す場を設けてコミュニケーションを重ねてきました。
たくさんの対話から引き出された、「九谷家らしい暮らし方」
家の設計について、ご家族から出ていた要望は、「独立した子供部屋をつくりたい」「離れていてもつながりを感じられる空間にしたい」「緑をポイントカラーに使いたい」ということ。あとはハニカムラボとの対話の中で、「九谷家らしい暮らし方」が自然と引き出されていきました。
いつも打ち合わせが脱線して長くなっちゃって、最低でも2時間、長い時は4時間ぐらい喋ってたこともありましたよね?でもそれだけ喋ってたら、皆さんが何に重きを置いて、どういう暮らしをしているかがわかる。たとえば九谷家は、ご夫婦でキッチンに立つことも多いし、家族3人でしょっちゅう“手づくり餃子の日”をやってるんです。キッチンで具をつくって、テーブルで包んで。そんな風景を想像しながら、キッチンは大人2人が一緒に立って動ける空間を確保して、テーブルとの距離も近くなるよう考えました。キッチンをギリギリまで広げようとすると、隣り合うお風呂とのせめぎ合いで、そこは何枚も図面を書いて頭を悩ませましたね。
マンション時代よりもキッチンは断然使いやすいです!
前は狭くて2人で作業できなかったもんね。
家のどこにいてもお互いの存在が感じられる「心地よい抜け感」
九谷家を訪れる人の目に最初に飛び込んでくるのは、リビングの真ん中にある階段。上下を行き来する通路であると同時に、上階から光を取り込む採光口でもあって、空間を分断しない「抜け感」がポイントです。
鉄の部材は耐震のためのものですが、装飾の効果もありますね。階段の踊り場下は、ちょうど3歳ぐらいの子どもがくぐれるぐらいの高さなので、ちょっと遊具みたいでもあって、どうもぐるぐる走り回りたくなるみたいです(笑)。
僕も、あの階段下でよく寝転んだりしますよ。なんか落ち着くんですよね(笑)。あとは踊り場にゴロンと横になったり、テレビ見たりとか……。
大人もそんな使い方ができるとは、想像してなかった!(笑)
あとは、下で私たち夫婦が話してるときに、上にいる息子が、“それは○○やで〜”って会話に加わってくることもあります。だから別々の場所にいても、一緒にいる感じがするんですよね。
そしてもうひとつ、ハニカムラボがあえて強く推したのがオーク無垢材の床。ご夫妻の醸し出す空気感や好きなものを観察していると、「○○風スタイル」などといった見た目ではなく、本質的な心地よさを志向していることが感じ取れたからでした。
予算は少々オーバーしますが、九谷家は無垢で行ってください!って言われましたよね。
絶対気に入ってくれて、その価値をわかってくれると思ってましたから。
床で寝転びたくなるぐらい気持ちよくて、本当によかったと思っています。あとは照明やダイニングセットも湯川さんに一緒に選んでもらったんですけど、湯川さんのものの選び方とかこだわりは、私たちもすごく勉強になりました。
家族も家づくりに参加することで、愛着がより深まる
ハニカムラボが大切にしているのは、「住み手と一緒につくる」感覚。たとえば、この家に光を取り込む重要な役割を果たしているのが、2階の子供部屋に設けた月見窓ですが、この窓のつけ方を決めるプロセスには、小学生の息子さんも一役買っています。
この家に光を入れて下階まで到達させるには、あそこに窓をつけるのが一番いいんです。でもあそこはナリくん(息子さんの愛称)の部屋だから、まずナリくんに窓をつけさせてほしい、ってプレゼンをして、どんな形がいいかも相談しました。学校帰りに、彼にここに寄ってもらってね。その時に、せっかくだからこんな面白いことは、お父さんお母さんには内緒にしておいて、後でびっくりさせよう、って二人で相談したんです。
息子にとっては湯川さんと秘密を共有しているのも嬉しかったみたいです。あれ、最初のプランには入ってなかったけれど、途中で湯川さんが閃いたんですよね。もう工事の後半は、湯川さんのアイデアが次々と出てきて、花火大会のフィナーレみたいでした。どんどーん!って(笑)。
月見窓のことは、現場の皆さんが内緒で作業しているところに僕たちが出くわしてしまって、わかっちゃったんですけど(笑)。工事中はとにかく毎日のように現場を見に行ってたんですよ。家ができていく過程を見るのはやっぱり楽しいし、現場監督さんや職人さんとお話しさせてもらうと、ここまで考えてくれてるのか、ということがわかって、家に対する愛着もより深まります。
ご主人はかつて幼い頃、配管工をしていたお父さんの仕事場を見に行くのが好きだったのだとか。自邸ができていく現場を見るのは、その頃の風景や匂いなどの記憶が呼び覚まされる、懐かしい体験でもあったそうです。
そんなご主人に、最後にハニカムラボからお願いしたのは「表札を自作してください」ということ。
私たちは、市販のアイアンのものをオーダーすればいいか、と思ってたんですが、湯川さんが、“この家はもうちょっとオリジナリティのあるものの方がいい”、っておっしゃって。
それで息子が描いた字を湯川さんに見てもらったら、これがいい、って言ってくれて。そこから彫り方の案を奥さんが出してくれて、僕が彫ったんです。
現場で頑張って作業してる職人さんの姿を見て、触発されてたよね。
そう、僕も自分のできる限りのことは頑張ってやろうって。息子の図工用の彫刻刀しかなかったんで大変でしたけど(笑)。実は、湯川さんへのリスペクトを込めて、ハニカムの六角形も刻んでるんです。
夫はここに引っ越してから、とにかく毎日、“いい家だ〜”って言い続けてるんです。 “私と結婚して一番よかったことは、あの時、この家と湯川さんを見つけてくれたことだ”、って言うぐらいなんですよ(笑)
家にまつわる楽しいおしゃべりが、あとからあとから湧いてくる九谷家。お施主様とハニカムラボとの共同作業から生まれた空間は、これからさらにたくさんの思い出が刻み込まれて、家の味わいも深まっていくことでしょう。
(取材/松本 幸)