ハニカムラボなら一緒につくっていける、そう思った
髙根家は、ご夫婦と小学生のお子さんふたりの4人家族に、フレンチブルドック1匹と猫1匹。奥様が生まれ育ったこの界隈は、ご近所みんな家族ぐるみで仲がよく、住み心地もばつぐん。別の場所に引っ越すことは考えられなかったと言います。
毎週のように近所の人と家の前でバーベキューして、一緒に飲んで、っていう生活。夏は子どもが上半身裸で走り回ってるし、ここだけ時代が昭和で止まってるみたいなんですよね(笑)。
ある時、前に住んでいた家から目と鼻の先にある、この3階建一軒家が空き家になりました。そこで、この家にリノベーションをほどこして引っ越すという案が浮上。物件購入のめどが立った頃、リノベーション会社探しが始まりました。
いくつかの会社に問い合わせをして、見積もりや提案をもらいましたが、なんか求めている感覚とは違うなあという感じで……。工事が進むほどにズレが出てきそうだなと思って、前々からホームページを見て気になっていたハニカムラボさんに相談したんです。お話ししてみたら、好きなものを分かり合える感触があったし、ここなら一緒につくって行ける、と思いました。
初めての打ち合わせは2023年の8月でしたよね。奥さんはお好きなものがはっきりしていて、イメージされている世界が掴みやすかったです。ここまで明確にご自分の好きなものを把握している方って意外に少ないですから、ふだんはこちらからヒアリングしながらお好きなものを聞き取っていくことが多いんですが。
ちなみに、デザインの決定権を握ったのは、奥様。かつて編集デザインの仕事をされていただけあって、アイデアの引き出しは豊富です。
夫には「私に全部決めさせて」と最初に言いました(笑)。デザインの仕事をしていた頃、いろんな雑誌を見ていて、あっと目に止まるインテリアの写真があったりすると、それをカラーコピーして自分なりにスクラップブックをつくっていたんですよね。今はInstagramとかありますけど、昔はアナログでしたから……。
集めた画像を見せていただくと、海外のレトロモダンな雰囲気もあれば、和の古道具もある、という感じ。「こんな家具を置きたい」とか「照明はこんな感じ」とか、ものすごく具体的にイメージされていて、またそれにぴったり合うモノを探してくるのがお上手なんですよ。
緑色の玄関に、ドミトリーのような寝室。独創的スタイルをカタチに
実はこの新居、以前に住んでいた家よりも床面積はコンパクト。しかしそれをマイナスに感じさせない、メリハリの効いた空間活用アイデアが詰まっています。まず訪れる人の目を惹くのが、鮮やかなグリーンの玄関。そしてドアを開ければゆったりとしたコンクリート土間があり、家族分の靴や外出時に使うものを納めたクローゼットもしっかり確保しています。
そして目を転じればカラフルな階段にびっくり。1階から2階へ上がる階段はグリーン。2〜3階をつなぐ階段はイエロー。そして屋上に上がる階段は空を思わせるブルーです。
玄関ドアをグリーンにしたのは、奥様が見つけてきた海外の写真がヒントになっています。
その緑の玄関ドアからイメージが広がって、湯川さんが「階段もカラフルにしよう」って思いついたんですよね。
間取りに関して奥様がこだわったのは3階の寝室。家族4人にそれぞれ独立したベッドコーナーと収納が割り振られており、プライベート感を守りつつも仕切り過ぎない壁の使い方が特徴的です。驚くのは、奥様のミニマムなベッドスペース。壁と壁のすき間にすっぽり収まって眠るような造りになっています。
「夫とは別に、自分専用の寝る場所がほしい。それも漫画喫茶の個室のようなスペースがいい」って言ったんですよね。「ベッドの三方が壁で囲まれていて、あとは電源があるだけでいい、照明もいらない」って。これは半年住んでみた結果、この家の中で私が一番気に入ってるところです。すごく落ち着いて安眠できるんですよ。子どもたちも私のベッドで寝たがるし、遊びに来る友だちにも、「私もこんなの欲しい!」って言われます。
前の家は親子みんな川の字になって寝てましたから、自分用のスペースができたのは僕もうれしいです。いつも出勤も朝早いんですけど、みんなを起こさずに家を出ていけますから。
最初はご主人の寝るスペースも同じ造りで考えてたんですけど、僕たちが工事している時に、ご主人がツツッと寄ってきて、 「僕は寝室にモノ置きたいんですけど……」ってボソッと言わはって(笑)。ギターとかアンプとか趣味のものを身近に置いておきたかったんですよね。
それで、壁とベッドの間にちょっと空間を作ってもらいました。前の家も近所やったから、工事中しょっちゅう見に来てたんですよね。
この家の先住者である猫ちゃんにもリスペクトを込めて
フレンチブルドック1匹・猫1匹と暮らす髙根家ですが、実はこの猫ちゃん、髙根家の一員になる前は、この家の元の持ち主だったおじいさんに飼われていました。しかし、おじいさんが亡くなられたのを機に、髙根家が引き取ってお世話してきたのです。つまり猫ちゃんにとって、この家へのお引越しは、いわば古巣へのカムバックでした。
今、猫ちゃんのお気に入りスポットになっているのが、玄関脇の覗き窓。ちょうど猫の目線から、外を眺められるようになっています。
最初、「玄関にも採光のための窓をつけた方がいいですよ」って湯川さんに言われた時、私、「窓はいらない」って言ったんですよね。
そうそう。僕としては窓はあった方がいいなと思っていて。ただ、いろいろ考えてはみたけど、奥様としてはどれもしっくり来なかったんですよね。ある時ふと、猫ちゃんの窓なら気に入ってくださるかもと思って、「猫ちゃんが先住者ですから、敬意を払って、こんな感じはどうですか?」とご提案してみたら、いいね、ということに。
私たちが家に帰ってくると、ちょうどあの窓からこっちを見てるんです。かわいいですよ。
ハニカムラボにとっては猫ちゃんもクライアントの一員。人間も動物も心地よく暮らせる住まいづくりのため、あれこれ知恵を絞るのが楽しいのです。
まるで空間デザイナーがいるみたい!施主支給で素敵インテリアが完成
こうして、約2ヶ月半の工事ののち、白とグレーと木の色を基調にしたシンプルで心地いい家が完成。随所にあしらわれている個性的な照明や家具、雑貨類は、ご家族が以前から愛用していたものや、奥様が選んで入手してきたものばかり。施主支給がとても多かったのが髙根邸の特長です。
キッチンのインド製ディッシュラックは、かなり前から目をつけていたんですけど、日本での取り扱いがなくなってしまって。探しに探した結果、フランスのショップで販売されているのを見つけ、個人輸入で取り寄せたんですけど、届いた箱には、組み立て前のバラバラの部品が……(笑)。だから全部イチから自分で組み立てたんですよ。
僕たちからしてみたら、空間デザイナーがいてくれるような感じ。奥様から新しいアイデアが次々飛び出してくるから楽しかったです。「洗面所に収納はいらない」とかね。
水道の蛇口と洗面台だけ、あとは棚も一切つけたくなくて、収納するものは全部、「カルテル」のチェストと木のりんご箱に入れています。
あとはキッチンも意外でした。このテイストなら壁はタイルかな、と思っていたら、タイルは一切いりませんと、グレーのパネルを選ばれた。ちょっと人とは違う個性があるんですよね。
住まいに調和するように、モノを減らして快適シンプルライフへ
デザインやアートが好きで、和の古道具もたくさん集めていた奥様に対し、ご主人はアマチュア無線、ギター、バイクなどが趣味。ご夫婦共通の趣味はキャンプですが、これも好きで集めた道具類がたくさん(ランタンだけでも10個以上!)あって、持ちものの量は相当なものでした。けれど、前の家よりコンパクトになったこの家への入居にあたり、おふたりは思い切った「断捨離」を敢行しました。
本もCDも古道具も、山ほどあったのをほとんど全部処分しました。モノを減らすのは本当に大変ですよね。今はもうあまりモノを増やしたくないと思っています。あとはガレージだった場所を倉庫に使って、普段使わないものはそっちにまとめているんです。
今思うと、前は家をきれいに使おうとかいうこだわりもなかったんですよね。使っていない部屋もあって、広さはあったから、放っておくとモノが溜まっていく感じで。今は家の中がきれいになってるから、置くモノも厳選するようになりました。
家がコンパクトになって断熱もしっかり入ったので、暖房効率もよくなって、今年の冬は2階のエアコン1台つけていれば3階まであたたかかったですよ。電気代もかなり減ったと思います。とにかく、この家でやりたかったことは全部実現できて、今は大満足です!
ご家族が楽しく快適に住んでおられるのを見られて、僕も安心です。家は竣工した時がゴールなんじゃなくて、そこからつくっていくものですからね。僕もそのお宅の暮らしができあがっていく過程を見守っていきたいし、トラブルがあったらいつでもおっしゃってくださいね!
固定概念に囚われない自由な発想が、住まいのあちこちに光る髙根邸。ずっと住み続けたい界隈で、厳選した「好き」に囲まれて暮らす。そんな幸せのかたちが、これから歳月を重ねてどんなふうに進化していくのか、楽しみです。
(取材/松本 幸)